個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休|保険料免除の誤解と使える制度を解説

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休を解説する個人事業主(フリーランス)向け図解

個人事業主(フリーランス)が出産・育児のために仕事を休んでも、雇用される労働者と同じ法定の育児休業や育児休業給付を利用できるわけではありません。ただし、社会保険料の負担軽減が何もないわけでもありません。

2026年8月3日時点では、国民年金の産前産後免除と国民健康保険の産前産後軽減が利用できます。さらに、2026年10月1日からは国民年金の第1号被保険者を対象とする育児免除制度が始まります。

重要なのは、育児休業、育児休業給付、国民年金の免除、国民健康保険の軽減を分けることです。加入している制度と子の年齢を確認すると、対象になる支援と手続き先が明確になります。

個人事業主にも会社員と同じ育休制度があるんですか?
法定の育休と保険料の負担軽減を分けて考えるのじゃ

個人事業主の育休と社会保険の結論

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:個人事業主の育休と社会保険の結論を解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
育休給付はなくても年金の免除はあるんですか?
2026年10月から第1号向けの育児免除が始まるのじゃ

個人事業主の育休を考えるときは、休業制度と保険料軽減は別という前提が必要です。個人事業を休むことはできますが、それだけで労働者向けの給付や保険料免除が一括適用されるわけではありません。

法定の育児休業と育児休業給付は原則対象外

育児・介護休業法の育児休業は、事業主に雇用される労働者の制度です。個人事業だけを営む人は事業主との雇用関係がないため、法定の育児休業の対象外です。仕事を休む期間は、自身で取引先や業務量を調整して設けることになります。

育児休業給付も雇用保険の被保険者を対象とする給付です。厚生労働省の育児休業等給付Q&Aでも、自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない人は雇用保険の被保険者ではなく、給付を受給できないと案内しています。

国民年金は2026年10月から育児免除が始まる

国民年金には、2026年10月1日から第1号被保険者の育児免除制度が加わります。1歳になるまでの子を養育する実父母・養父母が申請すると、所得に関係なく対象期間の国民年金保険料が免除されます。

2026年8月3日時点では施行前なので、免除されるのは2026年10月以後の対象月分です。制度開始前から子を養育している場合も、2026年10月時点で子が1歳未満なら、1歳の誕生日の前月までの該当月が対象になり得ます。

国保に育児免除はなく産前産後軽減がある

2026年10月に始まる育児免除は国民年金の制度です。国民健康保険には子が1歳になるまでの全国一律の育児免除はありません。市区町村国保の保険料(税)は自治体の計算方法・条例に基づき、国保組合の保険料は加入組合の規約に基づいて賦課されます。

一方、出産する国保加入者には産前産後期間の軽減があります。育休と扶養も別論点です。扶養の収入要件やいわゆる130万円の壁は、個人事業主(フリーランス)の社会保険扶養で確認できます。

会社員の育休との違い

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:会社員の育休との違いを解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
2025年4月から増えた雇用保険の給付も対象ですか?
勤務先側の雇用保険資格と各給付の要件で決まるのじゃ

会社員と個人事業主で支援が異なるのは、加入制度と雇用関係が違うためです。「個人事業主」という呼称だけで決めず、実際に雇用保険・健康保険・厚生年金へ加入しているかを確認します。

会社員は健康保険・厚生年金と雇用保険の対象

会社員が育児休業を取得すると、事業主の届出により健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分・事業主負担分が免除される場合があります。日本年金機構の育児休業中の厚生年金保険料の案内では、月額保険料と賞与保険料で免除要件が異なることも示されています。

雇用保険の育児休業給付は、育児休業を取得した雇用保険被保険者が一定の要件を満たす場合に対象となります。休業した事実だけではなく、被保険者資格と支給要件で判断されます。

2025年4月からは、雇用保険の育児関係給付に出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金が加わりました。出生後休業支援給付金は、出生直後の一定期間に育児休業給付の受給資格者が、原則として配偶者とともに14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たす場合の上乗せ給付です。育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育する雇用保険被保険者が時短勤務をし、賃金が低下するなどの要件を満たす場合に支給されます。

個人事業のみなら国民年金第1号と国保が基本

日本国内に住む20歳以上60歳未満で厚生年金に加入しておらず、国民年金の第3号被保険者でもない個人事業主は、原則として国民年金の第1号被保険者です。医療保険は、市区町村の国民健康保険または業種別の国民健康保険組合などに加入します。

第1号・第2号・第3号は、国民年金の被保険者区分です。社会保険全体の関係は社会保険の5つの種類と仕組みで確認できます。

雇用されながら事業をする場合は資格を分けて確認

会社員として雇用されながら副業で個人事業を営む人は、勤務先で健康保険・厚生年金・雇用保険の被保険者になっている場合があります。この場合、個人事業を持つことだけで育児休業給付の対象外にはなりません

出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金も、個人事業だけを営み雇用保険の被保険者でない本人には支給されません。雇用されながら個人事業を営む人や雇用されている配偶者は、勤務先側の雇用保険資格と各給付の要件で判定されます。

出生後休業支援給付金を申請する雇用保険被保険者の配偶者が自営業者・フリーランスなど雇用される労働者でない場合は、配偶者の育児休業を要件としない場合に該当します。申請時には住民票や直近の課税証明書などで配偶者の状態を確認する手続きがあるため、勤務先またはハローワークへ必要書類を確認します。

反対に、業務委託契約という名称でも実態が労働者に当たる可能性があります。育児休業や給付の可否は、雇用契約、勤務実態、各保険の資格を勤務先とハローワーク、加入中の保険者で確認します。

産前産後に使える保険料軽減

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:産前産後に使える保険料軽減を解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
産前産後は年金も国保も同じ免除なんですか?
年金は免除、国保は所得割と均等割の軽減なのじゃ

2026年10月の育児免除とは別に、出産する国民年金第1号被保険者と国保加入者には産前産後の負担軽減があります。年金と国保では効果と手続きが異なります。

国民年金は4か月または6か月を免除

国民年金の産前産後免除は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間が対象です。多胎妊娠では、出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間となります。

妊娠85日以上の出産が対象で、死産、流産、早産を含みます。免除期間は保険料を納付した期間として老齢基礎年金額に反映されます。日本年金機構の産前産後免除の案内では、出産予定日の6か月前から届出でき、出産後の届出も可能とされています。

国保は所得割と均等割を軽減

国民健康保険では、出産する被保険者について産前産後期間相当分の所得割額均等割額が軽減されます。単胎は出産予定月の前月から4か月分、多胎は3か月前から6か月分が基本です。

軽減されるのは出産する被保険者の対象部分です。世帯単位で計算する国保料のすべてが免除される制度ではないため、世帯の保険料がゼロになるとは限りません。計算方法や届出方法は自治体・国保組合へ確認します。

年金と国保は別々に手続きを確認

国民年金の産前産後免除は、市区町村の国民年金窓口への届出、郵送または電子申請を利用できます。国保の産前産後軽減は、自治体が出産予定を把握できない場合などに届出を求められることがあります。

  • 国民年金
    産前産後免除の届出状況と、2026年10月以後の育児免除を確認
  • 国民健康保険
    産前産後軽減の届出要否と、軽減後の通知額を確認
  • 国保組合
    市区町村国保と規約・手続きが異なるため加入組合へ確認

同じ窓口で案内される場合でも制度は別です。片方の手続きだけで両方完了したと判断しないことが申請漏れを防ぎます。

2026年10月からの国民年金育児免除

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:2026年10月からの国民年金育児免除を解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
父母は同じ期間だけ育児免除になるんですか?
実母と実父・養父母では対象期間が異なるのじゃ

日本年金機構は、国民年金保険料の育児免除制度を2026年10月1日から開始すると案内しています。所得要件や休業要件はありませんが、対象者・子との関係・住所・期間の要件を満たして申請する必要があります。

第1号被保険者の実父母・養父母が対象

対象は、1歳になるまでの子を養育する国民年金第1号被保険者の実父母・養父母です。親子関係が継続し、子と同一住所であることが要件です。法律上の実子・養子のほか、特別養子縁組の監護期間にある子なども対象に含まれます。

夫婦がともに第1号被保険者で要件を満たす場合は、父母それぞれが本人分の免除対象です。国民年金の第2号被保険者は勤務先を通じた育児休業中の保険料免除を確認し、第3号被保険者はこの育児免除の対象外です。

実母と実父・養父母で免除期間が異なる

産前産後免除が適用される実母は、その期間に引き続く9か月間が育児免除となり、産前産後免除と合わせて最大13か月間です。実父または養父母は、子を養育することとなった月から1歳の誕生日の前月まで、最大12か月間が対象です。

  • 実母
    産前産後免除に続く9か月。両制度を合わせて最大13か月
  • 実父・養父母
    養育開始月から1歳の誕生日の前月まで最大12か月
  • 施行日前から養育
    2026年10月以後で、1歳の誕生日の前月までの該当月

出生日や養育開始日によって実際の対象月が変わるため、日本年金機構の期間例と自身の日付を照合します。

申請して納付済期間として反映を受ける

育児免除は申請によって適用されます。免除期間は保険料納付済期間として老齢基礎年金の受給額へ反映されます。すでに対象月分を納めている場合も、申請後に充当または還付されます。

手続きはマイナポータルの電子申請、市区町村の国民年金窓口または郵送で行えます。国保の軽減手続きとは別なので、2026年10月をまたいで1歳未満の子を養育する第1号被保険者は、育児免除の申請状況を個別に確認します。

個人事業主が使える出産・育児給付

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:個人事業主が使える出産・育児給付を解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
育児休業給付以外にも使える給付があるんですか?
出産育児一時金や児童手当などを確認するのじゃ

育児休業給付を受けられない場合でも、働き方を問わず対象になり得る給付があります。加入中の医療保険から出る給付と、市区町村が窓口になる子育て給付を分けて確認します。

出産育児一時金は公的医療保険から支給

出産育児一時金は、出産時に公的医療保険へ加入し、妊娠4か月(85日)以上で出産した場合に、子ども1人につき原則50万円が支給される制度です。国保加入の個人事業主も対象になり得ます。

厚生労働省の出産育児一時金の案内では、直接支払制度、受取代理制度、償還払い制度が案内されています。実際の支給額や申請書類は、出産日時点で加入する保険者へ確認します。

妊婦のための支援給付と児童手当

妊婦のための支援給付は、妊娠届出時に5万円、妊娠後期以降に妊娠している子どもの数に応じて1人当たり5万円が支給されます。こども家庭庁の妊娠・出産・子育て支援の案内では、市区町村の相談支援と合わせて実施するとしています。

児童手当は、0歳から高校生年代までの子を養育する人が対象です。こども家庭庁の児童手当制度の案内で年齢・第3子以降の区分と支給額を確認できます。いずれも所定の認定・申請手続きが必要です。

出産手当金は加入中の健康保険で判断

出産手当金は、勤務先の健康保険の被保険者が出産のため仕事を休み、給与を受けられない期間などを対象とする給付です。市区町村国保には、会社員の健康保険と同じ全国一律の出産手当金はありません。

ただし、勤務先の健康保険へ加入しながら個人事業も営む人や、独自給付を定める国保組合の加入者は扱いが異なる場合があります。「個人事業主だから」で一括判断せず、出産日時点の加入資格を保険者へ確認します。

育児期の申請手続き

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:育児期の申請手続きを解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
申請漏れはどの順番で防ぐとよいですか?
資格、対象月、申請先、通知結果の順で確認するのじゃ

出産・育児期の申請漏れを防ぐには、加入資格・対象月・申請先を制度別に確認する必要があります。年金免除、国保軽減、出産育児一時金、子育て給付は、それぞれ適用条件と窓口が異なります。

加入資格と申請先を先に確認

最初に、出産予定日・子の誕生日、国民年金の被保険者区分、加入中の医療保険、雇用保険資格を1枚にまとめます。次に制度ごとの申請先と期限を記録します。

  • 市区町村の国民年金窓口・日本年金機構
    産前産後免除と育児免除
  • 市区町村の国保窓口・国保組合
    産前産後軽減と保険料通知
  • 加入中の医療保険
    出産育児一時金と独自給付
  • 市区町村の子育て窓口
    妊婦のための支援給付と児童手当
  • ハローワーク・勤務先
    雇用される仕事がある場合の育児休業給付

資格が途中で変わる場合は、出産日・養育期間のどの時点でどの制度に加入しているかを時系列で確認します。

申請結果と通知額を確認

申請後は、決定通知や保険料変更通知で対象月と金額を確認します。国民年金の免除記録と国保の軽減額は別々に反映されるため、申請書を出しただけで完了としないことが重要です。

届出の控え、受付日、問い合わせ先、決定通知を同じ場所に保存すると、未反映の月がある場合に確認しやすくなります。

休業中の資金不足への備え

個人事業主(フリーランス)の社会保険と育休:休業中の資金不足への備えを解説する個人事業主(フリーランス)向け図解
休業中の資金不足はどう把握するんですか?
入金と支出を月別に並べ、不足月を見つけるのじゃ

個人事業主が育児期の資金不足を防ぐには、給付額だけでなく申請時期と入金時期を把握する必要があります。税金、社会保険料、事業の固定費は、売上が止まっても同時には止まりません。

休業月ごとの収入と支出を並べる

資金表には、休業予定月ごとの売上入金、給付の見込時期、生活費、事業固定費、税金、国保料、国民年金保険料を並べます。免除や軽減の対象月も記載すると、入金前に不足する金額が見えます。

取引先と業務再開条件を決める

取引先との契約に再委託制限や納期変更の手続きがある場合は、休業期間を決める前に確認します。業務再開日を固定し過ぎず、連絡窓口と引継ぎ範囲を合意しておくと、出産後の体調や保育状況に合わせやすくなります。

取引先には、最終稼働日、連絡可能な範囲、納品済みの業務、再開時の確認方法を共有します。復帰後の業務量は一度に元へ戻さず、再開条件を段階で決めると売上見込みと保育状況を調整しやすくなります。

納付が難しいときは減免・猶予を相談

育児免除の対象外月でも、所得減少などにより国民年金保険料の納付が難しい場合は、国民年金保険料の免除・納付猶予制度を利用できる場合があります。一般の免除・猶予は所得要件や将来の年金額への反映が育児免除と異なります。

国保にも自治体の条例に基づく減免・徴収猶予がある場合があります。未納のままにせず納期限前に相談し、対象要件、申請期限、必要書類を確認することが重要です。


個人事業主(フリーランス)の育児期は、年金免除・国保軽減・給付の対象月と申請先を分け、月別の資金表へ反映することで必要な備えを確認できます。

制度別に対象月と申請先を分けるのが要点じゃ
育休と保険料軽減は別に確認するんですね!
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