個人事業主(フリーランス)の社会保険とは?加入できる種類と会社員との違い・負担を抑える方法

会社員から独立すると、これまで給与から自動で天引きされていた社会保険を、すべて自分で選び、自分で手続きし、自分で払うことになります。しかし「個人事業主(フリーランス)が入る社会保険とは何なのか」「会社員のときと何が変わるのか」は、意外と体系立てて説明されていません。この記事では、個人事業主(フリーランス)が加入する社会保険の全体像を「加入できるもの・加入できないもの・実は厚生年金や健康保険に入る方法・不足を自分で補う手段」という4つの軸で整理します。制度の名前を覚えるだけでなく、自分の状況でどの選択肢を取ればよいかを判断できるレベルまで、順番に見ていきましょう。

個人事業主が入る社会保険って、そもそも何があるんですか?
今日は加入できるもの・できないものから順に見ていくぞ

個人事業主が加入する社会保険の全体像

結局、個人事業主が入るのはどの保険なんですか?
基本は国保・国民年金・介護保険の3つじゃ

「社会保険」という言葉には、広い意味と狭い意味の2つがあります。まずここを整理しておくと、以降の話が一気に分かりやすくなります。

広義の社会保険は、次の5つの制度をまとめた総称です。

  • 公的医療保険(健康保険・国民健康保険)
  • 年金保険(厚生年金・国民年金)
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

このうち「公的医療保険・年金保険・介護保険」の3つを狭義の社会保険、「雇用保険・労災保険」の2つを労働保険と呼び分けることがあります。

そのうえで結論を先に言うと、個人事業主(フリーランス)が基本的に加入するのは国民健康保険・国民年金・介護保険の3つです。雇用保険と労災保険は、原則として個人事業主本人は対象外になります。会社員が5種類すべてでカバーされているのに対し、個人事業主は加入できる範囲がそもそも狭い、という点をまず押さえておきましょう。

なぜこうした違いが生まれるかというと、雇用保険や労災保険が「雇われて働く労働者」を守るための制度だからです。事業者である個人事業主は、この枠組みの外に置かれます。だからこそ、足りない保障を自分で見極めて補う必要が出てくる——これが個人事業主の社会保険を考えるうえで一番大事な出発点です。

個人事業主が加入できる社会保険の種類

健康保険は会社員と同じものじゃないんですね!
うむ、個人事業主は国民健康保険に入るのじゃ

個人事業主が加入する3つの制度を、それぞれ具体的に見ていきます。

国民健康保険(公的医療保険)

日本では国民皆保険制度により、すべての人が公的医療保険に加入することになっています。会社員が勤務先の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に入るのに対し、個人事業主(フリーランス)は国民健康保険(国保)に加入するのが基本です。

国民健康保険は、医療機関の窓口での自己負担が原則3割で、高額療養費制度も使える点は会社員の健康保険と同じです。一方で、保険料は全額自己負担で、会社員のような労使折半はありません。また、業務外のケガや病気で働けないときに給与の一部を補う傷病手当金や、産前産後の出産手当金が原則ないことも、会社員の健康保険との大きな違いです。

保険料は前年の所得などをもとに市区町村ごとに計算されるため、住む地域や前年の稼ぎによって金額が変わります。加入手続きは住民票のある市区町村の窓口で行います。

国民年金

公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造で説明されます。会社員は1階の国民年金に2階の厚生年金が上乗せされますが、個人事業主(フリーランス)が加入できるのは1階部分の国民年金のみです。

国民年金の保険料は、所得にかかわらず全国一律の定額で、年度ごとに改定されます。20歳以上60歳未満の人に加入義務があり、会社を辞めて独立した場合は、退職後に厚生年金から国民年金へ切り替える手続きが必要です。厚生年金がない分、将来受け取れる年金額は会社員より少なくなりやすいため、2階部分を自分で用意する発想が重要になります。

介護保険

介護保険は、介護が必要になったときに社会全体で支える制度で、40歳以上のすべての人に加入義務があります。この点は個人事業主も会社員も変わりません。

40〜64歳の人は、介護保険料を国民健康保険料に上乗せする形で納めるため、別途手続きは不要です。65歳以上になると、原則として年金からの天引きに切り替わります。要介護・要支援と認定されれば、介護サービスを1〜3割の自己負担で利用できます。

個人事業主が加入できない社会保険と特別加入制度

労災保険には個人事業主は入れないんですか?
原則はな。じゃが特別加入という道もあるのじゃ

個人事業主本人が原則として加入できないのが、雇用保険労災保険です。

雇用保険は、失業したときの求職者給付(いわゆる失業手当)や、育児・介護休業給付などを受けられる制度ですが、事業者である個人事業主は対象外です。そのため、廃業して収入が途絶えても、会社員のような失業給付は受け取れません。

労災保険も、業務中や通勤中のケガ・病気を補償する労働者向けの制度で、個人事業主は原則加入できません。ただし労災保険には特別加入制度があり、一定の要件を満たす人は任意で加入できます。

  • 一人親方・自営業者
    建設業(大工・左官など)、個人タクシーや個人貨物運送などの事業を行う人
  • 特定作業従事者
    芸能関係者、アニメーション制作従事者、柔道整復師など
  • 特定フリーランス事業者
    2024年11月から、企業などから業務委託を受けて働く個人(翻訳・講師・デザイン・コンサルティング等)も特別加入の対象に加わった

特別加入は自動では適用されず、自分で特別加入団体を通じて手続きし、保険料を納める必要があります。危険を伴う業務や、働けなくなると収入への影響が大きい人ほど、検討する価値があります。

会社員と比べて手薄になりやすいポイント

会社員よりこんなに保障が薄いんですか?!
全額自己負担で扶養もない。差は大きいのじゃ

個人事業主(フリーランス)の社会保険が「手薄」と言われるのは、感覚的な話ではなく、はっきりした構造的な理由があります。主な違いは次の4つです。

  • 保険料が全額自己負担
    会社員は健康保険料・厚生年金保険料を会社と折半するが、個人事業主は国民健康保険料も国民年金保険料も全額を自分で負担する
  • 扶養の概念がない
    国民健康保険には扶養がなく、家族の人数分だけ保険料(均等割)が加算される。国民年金も配偶者や成人した子ども一人ひとりに定額の保険料がかかる
  • 傷病手当金・出産手当金がない
    国民健康保険には、働けない期間の収入を補う給付が原則ないため、長期療養時の収入減を自分で備える必要がある
  • 年金が1階部分のみ
    厚生年金がなく国民年金だけになるため、将来の年金額は会社員より少なくなりやすい

会社員時代は会社が半分払い、扶養家族が何人いても保険料が変わらず、病気で休めば傷病手当金が出る——この「見えていなかった手厚さ」が、独立すると一気に自分の負担として表面化します。だからこそ、不足する保障を自分で見極めて補うことが、個人事業主にとっての社会保険対策の中心になります。

個人事業主でも社会保険(厚生年金・健康保険)に入る方法

個人事業主でも厚生年金に入る方法はありますか?
法人化や社保加入サービスという手があるのじゃ

「個人事業主は厚生年金や健康保険には入れない」とよく言われますが、これは本人が単独で働いている場合の話です。実際には、いくつかの条件やルートを満たせば、個人事業主(フリーランス)でも厚生年金・健康保険に加入できる場合があります。代表的な方法を中立に整理します。

法人化して社会保険の適用事業所になる

事業が軌道に乗ってきたら、法人化(法人成り)という選択肢があります。法人は代表者1人であっても社会保険の適用事業所となり、社長自身も健康保険・厚生年金に加入します。これにより、保険料は会社と本人で折半する形になり、健康保険に扶養制度や傷病手当金が使えるようになります。将来は国民年金に加えて厚生年金も受け取れるため、老後の年金額を増やす効果も期待できます。

一方で、法人化には設立費用や法人住民税の均等割、社会保険の手続き・維持の手間がかかります。役員報酬の設定によって保険料が変わるため、何が得で何が負担になるかを試算したうえで判断することが大切です。

社会保険に加入できるサービスを利用する

近年は、一定の条件を満たすことで、個人事業主(フリーランス)でも協会けんぽなどの社会保険に加入できるサービスが登場しています。仕組みとしては、サービス提供元と雇用に近い関係を結ぶことで、厚生年金・健康保険の被保険者になるというものです。家族を扶養に入れられる、国民健康保険より負担を抑えられる場合がある、といったメリットが語られます。

ただし、加入の可否や条件、費用、保障内容は提供元によって異なります。仕組みを正しく理解し、国民健康保険や任意継続と総額で比較したうえで、自分に合うかどうかを慎重に判断しましょう。

国民健康保険組合に加入する

厳密には厚生年金への加入とは別ですが、健康保険の負担を抑える手段として国民健康保険組合(国保組合)があります。これは特定の業種ごとに設立された医療保険で、たとえばデザイナーやライターなどが加入できる「文芸美術国民健康保険組合」などが知られています。

国保組合の保険料は、所得にかかわらず定額であることが多いため、所得が高い個人事業主ほど、市区町村の国民健康保険より負担が軽くなる場合があります。加入には各組合が定める加盟団体への所属や審査など、一定の要件を満たす必要があります。

退職直後は任意継続・家族の扶養も選べる

会社を辞めて独立した直後に限っては、次の2つも健康保険の選択肢になります。

  • 健康保険の任意継続:退職前の勤務先の健康保険に、最長2年間そのまま加入し続けられる制度。退職日の翌日から20日以内に申請する必要がある。保険料は全額自己負担になる
  • 家族の扶養に入る:配偶者や親の健康保険の被扶養者になれれば、保険料の負担なく健康保険に入れる。年収などの扶養要件を満たすことが条件

どれが有利かは、前年の所得・家族構成・加入していた健康保険の料率によって変わります。独立前後の早い段階で、複数の選択肢の見込み額を並べて比較しておくと、迷わず選べます。

保障の不足を自分で補う制度と保険

足りない保障はどうやって補えばいいんですか?
iDeCoや共済、民間保険を組み合わせるのじゃ

厚生年金や傷病手当金がない分の「足りない保障」は、公的な上乗せ制度と民間の保険を組み合わせて自分で用意できます。用途別に整理します。

まず、年金の上乗せを狙う公的・準公的な制度です。

  • 付加年金
    国民年金保険料に月額400円を上乗せすると、「200円×納付月数」が将来の年金に毎年上乗せされる。2年受け取れば元が取れる仕組みで、手軽に始めやすい
  • 国民年金基金
    国民年金に上乗せできる公的な年金制度。掛金は全額が社会保険料控除の対象になる
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
    自分で掛金を運用して老後資金をつくる私的年金。掛金は全額が所得控除の対象になる
  • 小規模企業共済
    個人事業主のための積み立て型の退職金制度。掛金は全額が所得控除の対象になる

次に、働けないリスクや万一への備えを担う民間保険です。

  • 医療保険
    入院・手術時に給付金を受け取れる。国民健康保険でカバーされない差額ベッド代や先進医療費に備えられる
  • 就業不能保険・所得補償保険
    病気やケガで長期間働けなくなったときに、毎月の給付を受けられる。傷病手当金がない個人事業主の収入減対策になる
  • 生命保険
    万一のときに遺族へ保険金を残せる。遺族年金が手薄な分を補える
  • 個人年金保険
    老後資金の上乗せを目的とした私的年金

これらはすべてに入る必要はありません。自分にとって何が一番不足しているか(老後資金なのか、働けないときの収入なのか、家族への保障なのか)を見極め、優先順位をつけて選ぶことが大切です。掛金が所得控除になる制度は、節税と将来の備えを同時に進められる点でも検討する価値があります。

従業員を雇ったときに必要な社会保険手続き

人を雇ったら社会保険の手続きが要るんですか?
従業員を1人雇えば労働保険が必要になるのじゃ

ここまでは個人事業主本人の話ですが、人を雇うと立場が変わります。従業員のために、事業所として社会保険の手続きが必要になる場合があります。

ポイントは、雇う人数と保険の種類によって扱いが分かれることです。

  • 狭義の社会保険(健康保険・厚生年金・介護保険)
    一部の業種を除き、常時5人以上の従業員を雇うと事業所として加入手続きが必要になる。5人未満でも任意で加入できる場合がある
  • 労働保険(雇用保険・労災保険)
    従業員を1人でも雇えば、人数や雇用形態にかかわらず加入手続きが必要になる

注意したいのは、事業所として社会保険に加入しても、個人事業主本人は原則としてその健康保険・厚生年金の対象外のままだという点です(本人が入るには前章の法人化などが必要)。従業員を雇う予定がある人は、加入条件や提出先・期限が細かく決まっているため、早めに年金事務所やハローワーク、労働基準監督署で確認しておくと安心です。

まとめ

個人事業主(フリーランス)の社会保険の種類と見直し手順をまとめた図解
選択肢がこんなにあるとは思いませんでした!
自分に足りない保障を見極めるのが肝心じゃ

個人事業主(フリーランス)が基本的に加入する社会保険は、国民健康保険・国民年金・介護保険の3つです。雇用保険と労災保険は原則対象外ですが、労災には特別加入という道もあります。会社員と比べると、保険料の全額自己負担・扶養の概念なし・傷病手当金なし・年金が1階のみといった点で保障が手薄になりやすいのが実情です。

一方で、「個人事業主は社会保険に入れない」で終わりではありません。法人化や社会保険に加入できるサービス、国保組合など、厚生年金・健康保険に近づくルートもあります。そして、付加年金・iDeCo・小規模企業共済・民間保険を使えば、足りない保障は自分で補えます。

最後に、この記事を読み終えた個人事業主(フリーランス)が取るべき具体的なアクションを3つ挙げます。

  • 自分が今どの社会保険に入っているか(国保・国民年金・介護保険)と、保険料の内訳を確認する
  • 保険料負担が重いと感じるなら、国保組合・任意継続・社会保険に加入できるサービスの見込み額を国保と比較する
  • 老後資金・働けないとき・家族への保障のうち、自分に一番足りない保障を1つ決めて、対応する制度や保険を検討する

社会保険は一度決めたら終わりではなく、収入や家族構成、事業の規模が変われば最適な選択肢も変わります。年に一度は自分の保険料と選択肢を見直す習慣を持っておくと、負担を抑えながら安心して事業を続けやすくなります。


社会保険は「会社員より手薄だから仕方ない」とあきらめるものではなく、加入できる制度を正しく知り、足りない部分を自分で選んで補っていくものです。国保・国民年金・介護保険という土台を押さえたうえで、法人化や社会保険に加入できるサービス、公的な上乗せ制度や民間保険まで、自分の状況に合う選択肢を一つずつ検討していきましょう。まずは今の保険料と保障の内容を確認するところから始めてみてください。

これで社会保険の全体像はつかめたのじゃ
保険料を一度見直すことが、負担を抑える第一歩なんですね!
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