個人事業主(フリーランス)の年金はいくら?受給額と増やす方法をやさしく解説

会社を辞めて独立すると、多くの個人事業主(フリーランス)が「厚生年金がなくなって、将来もらえる年金が減るらしい」という不安に直面します。実際、フリーランスが加入するのは国民年金だけで、会社員と比べると老後に受け取れる年金は少なくなりがちです。ただ、少ないままにしておく必要はありません。この記事では、個人事業主(フリーランス)の年金がいくらになるのかを会社員と比べて確認したうえで、付加年金iDeCoなどで増やす方法、さらに意外と知られていない「厚生年金に入って年金を2階建てにする」という選択肢まで、何から始めればよいかの順番とあわせて整理します。

フリーランスの年金って、国民年金だけになっちゃうんですか?
そうじゃ。今日は年金の増やし方まで一緒に見ていくぞ

個人事業主(フリーランス)の年金の仕組み

会社員は2階建てで、フリーランスは1階だけなんですね!
そうじゃ。その差を自分で埋める必要があるのじゃ

いくらもらえるか・どう増やすかを考える前に、まず個人事業主(フリーランス)がどの年金に入っているのか、その仕組みを押さえておきましょう。ここが分かると、後の対策がなぜ必要なのかが理解しやすくなります。

フリーランスは国民年金の第1号被保険者

日本の公的年金は、働き方によって加入する立場が3つに分かれています。個人事業主(フリーランス)は、このうち国民年金の第1号被保険者に分類されます。会社員は第2号、その扶養に入る配偶者は第3号です。

第1号被保険者の大きな特徴は、保険料の納付も各種手続きも自分で行うことです。会社員時代は給与から天引きされ、意識せずに納めていた年金保険料を、独立後は自分で管理する必要があります。令和7年度の国民年金保険料は月額17,510円で、収入にかかわらず全員が同じ定額です。

会社員の「2階建て」との違い

日本の公的年金は、よく「2階建て」にたとえられます。1階部分がすべての人が加入する国民年金(老齢基礎年金)、2階部分が会社員・公務員だけが上乗せで加入する厚生年金(老齢厚生年金)です。

個人事業主(フリーランス)が受け取れるのは、原則としてこの1階部分だけです。会社員は1階に加えて、現役時代の収入に応じた2階部分が上乗せされます。しかも厚生年金の保険料は、会社と本人が半分ずつ負担する「労使折半」です。フリーランスは2階部分がないうえに、1階部分の保険料も全額を自分で負担する——この構造の違いが、後述する受給額の差を生みます。

国民年金がカバーする3つの保障

国民年金は老後の生活資金だけの制度ではありません。実は次の3つの保障がセットになっています。

  • 老齢基礎年金
    原則65歳から生涯にわたって受け取れる、いわゆる老後の年金
  • 障害基礎年金
    病気やけがで一定の障害状態になったときに受け取れる年金。現役世代でも対象になる
  • 遺族基礎年金
    加入者が亡くなったとき、生計を維持されていた子のある配偶者や子に支給される年金

会社のような団体保障がない個人事業主(フリーランス)にとって、国民年金は老後だけでなく「今のリスク」への備えでもあります。だからこそ、保険料の未納は老後の年金が減るだけの問題ではないのです。

個人事業主(フリーランス)の年金はいくらもらえる?

満額でも月7万円ほど…会社員とかなり違うんですね?
平均だと月9万円も差がつくのじゃ。埋め方を教えるぞ

仕組みが分かったところで、いちばん気になる「結局いくらもらえるのか」を確認しましょう。ここで示す金額が、これから考えるすべての年金対策の出発点になります。

老齢基礎年金の満額と月額

老齢基礎年金の「満額」は、20歳から60歳までの40年間(480か月)すべて保険料を納めた場合に受け取れる金額です。令和7年度の満額は年額831,700円、月額にして69,308円(68歳以下の場合)です。この金額は物価や賃金に応じて毎年改定されます。

注意したいのは、満額は誰もが受け取れる保証額ではないことです。受給額は納付した月数に比例して決まり、次の計算式で求められます。

  • 年金額の目安 = 満額(831,700円)× 保険料を納めた月数 ÷ 480
  • 例:30年間(360か月)だけ納めた場合 → 831,700円 × 360 ÷ 480 = 約623,775円

会社員との受給額の差

では、会社員とどれくらい差がつくのでしょうか。厚生労働省の集計では、自営業など国民年金だけの人は月約5万6,000円厚生年金の人は月約14万5,000円が平均受給額です(令和4年度)。

差はおよそ月9万円、年間にすると約100万円にもなります。この差の正体が、先ほどの「2階建ての2階部分(厚生年金)があるかどうか」です。個人事業主(フリーランス)は、この差を自分で埋める前提で老後を設計する必要があります。

未納・免除・学生納付特例で受給額は変わる

満額に届かない主な原因が、過去の未納・免除・猶予です。個人事業主(フリーランス)は収入が不安定になりやすく、こうした期間ができやすい立場でもあります。

  • 未納
    納めていない期間は、その分だけ将来の年金額がまるごと減る。放置が最も損
  • 免除
    申請して認められれば、免除された割合に応じて年金額に一部反映される(全額免除でも満額の2分の1が計算に入る)
  • 学生納付特例・納付猶予
    受給資格期間には算入されるが、追納しないと年金額には反映されない

つまり、収入が厳しいときは未納で放置せず、必ず免除・猶予を申請するのが鉄則です。免除や猶予を受けた期間は、あとから追納すれば年金額を取り戻せます。

年金を増やす前に国民年金の土台を固める

増やすなら、まずiDeCoを始めればいいんですか?
いや、まずは追納と付加年金で土台を固めるのじゃ

年金を増やすと聞くと、すぐにiDeCoや国民年金基金を思い浮かべる人が多いのですが、その前にやるべきことがあります。それが、国民年金という土台そのものを満額に近づけることです。上乗せ制度は、この土台の上に積む2階・3階だと考えてください。

免除・未納は追納で取り戻す

過去に免除や学生納付特例を受けた期間があるなら、まずは追納で満額に近づけることを検討しましょう。追納とは、免除・猶予された期間の保険料をあとから納めて、年金額を回復させる手続きです。

  • 追納できるのは、免除・猶予・学生納付特例を受けた期間のうち、過去10年分まで
  • 追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象になり、その年の所得税・住民税も軽くなる

10年を過ぎると追納できなくなるため、資金に余裕ができたら早めに手続きするのが得策です。上乗せ制度で運用に回す前に、まずは確実にリターンが決まっているこの土台固めを優先しましょう。

付加年金|月400円で効率よく上乗せ

土台を固めたうえで、いちばん手軽に上乗せできるのが付加年金です。国民年金保険料に月400円をプラスして納めるだけで、将来の年金を増やせる、第1号被保険者だけの制度です。

受け取れる金額は「200円 × 付加保険料を納めた月数」で、毎年の年金に一生涯上乗せされます。たとえば40年間(480か月)納めると、納付総額192,000円に対し、受け取りは年額96,000円です。わずか2年で元が取れる計算で、極めて効率のよい制度といえます。

ただし注意点として、付加年金は次に紹介する国民年金基金とは併用できません。どちらか一方の選択になる点は覚えておきましょう。

個人事業主(フリーランス)が年金を増やす3つの上乗せ制度

国民年金基金とiDeCo、どっちを選べばいいんでしょう?
安定なら基金、増やすならiDeCoじゃ。順に見るぞ

土台と付加年金を押さえたら、いよいよ本格的に年金を増やす上乗せ制度です。個人事業主(フリーランス)がよく使うのは、国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済の3つ。それぞれ性質が違うので、比較しながら見ていきましょう。

国民年金基金|終身で受け取れる第二の年金

国民年金基金は、第1号被保険者のために用意された公的な上乗せ制度で、会社員の厚生年金に相当する「第二の年金」と位置づけられます。掛金は加入時の年齢や口数で決まり、上限はiDeCoと合算して月6万8,000円です。

  • メリット
    将来の受給額が加入時に確定する終身年金で、掛金は全額所得控除になる
  • 注意点
    いったん加入すると自己都合では脱退できず、インフレ時は実質価値が目減りしやすい

受給額の見通しが立つ安定志向の人に向く一方、原則として途中でやめられない点は、収入が変動しやすいフリーランスにとって慎重に判断すべきところです。

iDeCo|運用で増やす私的年金

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を積み立て、投資信託などで運用する私的年金です。個人事業主(フリーランス)の掛金上限は、国民年金基金や付加保険料と合算して月6万8,000円までです(この上限は制度改正で引き上げが予定されています)。

iDeCo最大の魅力は、掛金が全額所得控除・運用益が非課税・受取時も控除という三段階の税制優遇です。ただしiDeCoは運用成績しだいで受給額が増減し、元本割れの可能性もあります。また原則60歳まで引き出せず、加入時・毎月の手数料もかかります。運用リスクを取ってでも増やしたい人向けの制度です。

小規模企業共済|自分の退職金

小規模企業共済は、個人事業主(フリーランス)や小規模企業の経営者が、廃業・引退に備えて積み立てる「自分の退職金」制度です。掛金は月1,000円から7万円まで500円単位で設定でき、こちらも全額が所得控除になります。

  • 貸付制度があり、積み立てた範囲内で事業資金を借りられる柔軟さがある
  • 加入20年(240か月)未満で任意解約すると、受取額が掛金を下回る元本割れの可能性がある

厳密には老齢年金ではなく退職金の制度ですが、老後資金づくりと節税を両立でき、いざというとき引き出せる柔軟さから、フリーランスの「守りの土台」として使いやすい制度です。

厚生年金に入って年金を2階建てにする選択肢

えっ、フリーランスでも厚生年金に入れるんですか?!
法人化や社保加入サービスで入れるのじゃ

ここまでは1階(国民年金)の上に自分で3階部分を積む方法でした。しかし、そもそもの発想を変えて、会社員と同じ厚生年金、つまり2階部分そのものに入るという道もあります。あまり知られていませんが、個人事業主(フリーランス)にとって有力な第3のルートです。

法人化して厚生年金に加入する

個人事業主(フリーランス)は原則として厚生年金に加入できませんが、例外があります。それが法人化(会社設立)です。自分で会社を設立し、その会社から役員報酬を受け取る形にすれば、自身が「役員(従業員)」として厚生年金の被保険者になれます。

厚生年金に入れば、将来の年金が老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされる本物の2階建てになります。ただし、法人化には設立費用や社会保険料の負担、法人としての会計・税務の手間が伴います。売上規模や事業計画を踏まえて、メリットが上回るかを見極める必要があります。

社保加入サービスで厚生年金に入る

法人化までは踏み切れない人向けに、近年は個人事業主(フリーランス)でも社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できるようにする社保加入サービスという選択肢が登場しています。サービスの仕組みを通じて厚生年金の適用を受けることで、年金を2階建てにできます。

  • 期待できること
    厚生年金に加入でき、将来の年金が老齢厚生年金の分だけ上乗せされる。健康保険もセットで手厚くなる
  • 確認すべきこと
    加入の要件・毎月かかる費用や保険料の負担・仕組みが自分の働き方に合うかを事前にしっかり確認する

裏技のように使える万能の制度ではなく、要件と費用を理解したうえで選ぶものです。自分の収入や将来設計に合うかを見極めて検討しましょう。

厚生年金に入るメリットと注意点

厚生年金に入るルートは、年金を根本から底上げできる反面、負担も増えます。メリットと注意点を整理しておきましょう。

  • メリット
    老齢厚生年金が上乗せされ、障害・遺族への保障も厚生年金の手厚い内容になる。扶養する配偶者を第3号被保険者にできる場合もある
  • 注意点
    保険料の負担が国民年金だけのときより増える。法人化・サービス利用ともに手続きやコストがかかる

「保険料は増えても、将来の年金と保障を会社員並みに引き上げたい」という個人事業主(フリーランス)にとっては、iDeCoや国民年金基金と並ぶ検討価値のある選択肢です。

何から始める?個人事業主(フリーランス)の年金対策の優先順位

結局、何から手をつければいいんですか?
土台→上乗せ→2階建ての順で進めるのじゃ

選択肢が多くて迷うかもしれませんが、着手する順番には基本の型があります。限られた資金を、効果とリスクのバランスで振り分けていきましょう。

目的別の優先順位フロー

多くの個人事業主(フリーランス)にとって、無理のない順番は次のとおりです。リターンが確実な「守り」から固め、余裕に応じて「増やす」「2階建て」へ広げていきます。

  • ①土台を固める
    未納をなくし、免除期間は追納。月400円の付加年金で効率よく上乗せする
  • ②守りながら増やす
    元本割れしにくく引き出せる小規模企業共済や、安定志向なら国民年金基金を重ねる
  • ③運用で育てる・2階建てにする
    余裕資金でiDeCoを運用し、負担を許容できるなら社保加入サービス・法人化で厚生年金に入る

まず確実な土台から着手し、事業の成長に合わせて上へ積み上げるのが、迷わないコツです。

始める前に知っておきたい注意点

節税や上乗せのメリットばかりに目が向きがちですが、それぞれに制約があります。始める前に次の点を押さえておきましょう。

  • iDeCoは原則60歳まで引き出せない。生活費や運転資金まで回さず、余裕資金の範囲で始める
  • 国民年金基金は原則として途中で脱退できない。長く続けられる掛金にする
  • 小規模企業共済は加入20年未満の任意解約で元本割れの可能性がある
  • 社保加入サービスや法人化は、要件・費用・保険料負担を事前に確認してから判断する

いずれも「長く無理なく続けられる金額」で始めるのが、失敗を避ける共通のコツです。判断に迷うときは、社会保険労務士やファイナンシャル・プランナーに自分の状況を相談するとよいでしょう。

まとめ

確実な土台から順に進めるのが大事なんですね?
その通りじゃ。まずは年金記録の確認から始めるのじゃ

個人事業主(フリーランス)が受け取れるのは原則として国民年金(老齢基礎年金)だけで、令和7年度の満額は月約6万9,000円、平均で見ると会社員との差は月約9万円にもなります。しかし、この差は自分で埋めていけます。

  • まず土台
    未納をなくし免除は追納、月400円の付加年金で効率よく底上げする
  • 次に上乗せ
    小規模企業共済・国民年金基金・iDeCoを、リスク許容度に応じて重ねる
  • さらに2階建て
    社保加入サービスや法人化で厚生年金に入り、年金そのものを底上げする

大切なのは、確実な土台から順に始めることです。いきなり運用に飛びつくのではなく、追納・付加年金で土台を固め、事業の成長に合わせて上乗せや厚生年金へと選択肢を広げていきましょう。早く始めるほど積み立てられる期間は長くなります。まずは自分の年金記録を「ねんきんネット」などで確認し、できることから一歩を踏み出してみてください。


年金の不安は「よく分からない」ことから生まれます。まずは自分がいくらもらえるのかを知り、追納や付加年金といった小さな一歩から始めれば、老後の備えは着実に育っていきます。この記事が、個人事業主(フリーランス)としての年金設計を見直すきっかけになればうれしいです。

これでフリーランスの年金対策はバッチリじゃな
年金記録を確認しておくと、増やす方法が見えてくるんですね!
目次
目次