「2026年から社会保険が変わる」というニュースを見て、個人事業主(フリーランス)の自分にも何か関係するのか気になっている人は多いはずです。結論から言うと、2025年6月に成立した年金制度改正法によって、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲が2026年から約10年かけて段階的に広がっていきます。ただし変わるポイントは複数あり、あなたの立場によって影響の出方が違います。この記事では、2026年以降に何が・いつから変わるのかを時系列で整理し、個人事業主(フリーランス)としてどこに注意すればいいかを解説します。
2026年に社会保険が変わる背景|2025年6月成立の年金制度改正法

まず、なぜ2026年から社会保険が変わるのか、その全体像をつかんでおきましょう。ここを押さえると、あとの個別の改正が「1つの大きな流れの一部」として理解できます。
適用拡大は約10年かけて段階的に進む
2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。この法律の柱の一つが、パート・アルバイトなどの短時間労働者を中心とした社会保険の適用拡大です。対象を一気に広げるのではなく、2026年から2035年にかけて段階的に進められます。
背景にあるのは、働き方に中立的な制度をつくり、より多くの人が厚生年金などの手厚い保障を受けられるようにするという狙いです。人口減少のなかで事業所の人材確保を後押しする意味もあります。
個人事業主に関係する変更は4つ
改正の内容は幅広いですが、個人事業主(フリーランス)に関わってくるのは主に次の4つの時点です。まずはこの並びだけ頭に入れておけば十分です。
- 2026年4月〜
健康保険の扶養認定ルールが労働契約ベースの判定に変わった - 2026年10月〜
「106万円の壁」と呼ばれた賃金要件が撤廃される予定 - 2027〜2035年
短時間労働者を加入させる企業規模要件が段階的に撤廃される予定 - 2029年10月〜
個人事業所の社会保険の適用業種が17業種以外へ拡大する予定
大事な前提として、個人事業主本人の国保・国民年金が自動的に厚生年金へ変わるわけではありません。適用拡大は主に「雇われて働く短時間労働者」を対象にした話です。だからこそ、自分がどの立場で関わるのかを分けて考える必要があります。
【2026年4月〜】社会保険の扶養認定ルールが変わった

4つのうち、すでに始まっているのがこの扶養認定の見直しです。家族の扶養にまつわる話なので、配偶者や家族の保険に関わる人はここから確認しましょう。
労働契約の内容で年収130万円を判定する
2026年4月1日から、健康保険の被扶養者認定における年間収入の判定方法が変わりました。これまでは過去・現在・将来の収入を総合的に見て「130万円未満か」を判断していましたが、給与収入のみの場合に限り、労働条件通知書に記載された時給・所定労働時間などから算出した年間収入見込みで判定する特例が加わりました。
- 契約上の年収が130万円未満なら、一時的な残業で実際の収入が超えても扶養にとどまれる
- 年金収入・事業収入など給与以外の収入がある場合は、従来どおりの総合判定が続く
- 新ルールの適用には、本人が「給与収入のみである」旨を申し立てる必要がある
個人事業主にとっての注意点
ここで個人事業主(フリーランス)が気をつけたいのは、事業収入がある人は新ルールの対象外という点です。この特例はあくまで給与収入だけの人向けなので、事業所得で生計を立てているフリーランスが配偶者の扶養に入るかどうかは、従来どおり収入全体で判断されます。
一方、あなたが配偶者や家族を自分の国保・扶養の側で支えている場合や、家族が給与で働いている場合には、この判定変更が関わってきます。家族の働き方を含めて世帯単位で確認しておくと安心です。
【2026年10月〜】106万円の壁(賃金要件)が撤廃される

次に来るのが、よく話題になる「106万円の壁」の撤廃です。名前は聞いたことがあっても中身は曖昧、という人が多いので、ここで正確に整理します。
月8.8万円の賃金要件がなくなる
短時間労働者が社会保険に加入する要件の一つに、月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)がありました。この賃金要件が2026年10月をめどに撤廃される予定です。背景には最低賃金の引き上げがあり、全国の時給水準が上がったことで、週20時間働けば自然に月8.8万円を超えるようになり、要件としての意味が薄れたためです。
撤廃後は、賃金額にかかわらず「週20時間以上」「2か月を超える雇用見込み」「学生でない」を満たす短時間労働者が加入対象になります(特定適用事業所に勤務している場合)。なお正式な施行日は、公布から3年以内に政令で定める日とされています。
個人事業主本人への影響は限定的
この改正も、国保・国民年金で働く個人事業主本人が直接加入対象になるわけではありません。壁が動くのは、あくまで雇われてパートで働く人の話です。
- 副業で短時間のパート勤務をしている個人事業主は、勤務先で加入しやすくなる
- 「106万円の壁」と「130万円の壁(被扶養者の認定基準)」は別の制度で、130万円の壁は残る
- 配偶者がパートで働いている世帯は、就業調整の考え方を見直す必要がある
副業で短時間労働をしていて社会保険に入る可能性がある人は、当事者目線での加入判定を別記事で詳しく整理しています。
【2027〜2035年】企業規模要件が段階的に撤廃される

ここからは、従業員を雇っている個人事業主(フリーランス)に関わる話です。人を雇う立場なら、この段階的スケジュールを必ず押さえておきましょう。
36人→21人→11人→撤廃のスケジュール
短時間労働者を社会保険に加入させる基準として、これまで「従業員51人以上の企業」という企業規模要件がありました。これが2027年から2035年にかけて段階的に引き下げられ、最終的に撤廃される予定です。
- 2027年10月〜:従業員数36人以上の事業所が対象
- 2029年10月〜:従業員数21人以上の事業所が対象
- 2032年10月〜:従業員数11人以上の事業所が対象
- 2035年10月〜:企業規模要件が撤廃され、規模にかかわらず対象
この撤廃で新たに約70万人が社会保険の加入対象になると見込まれています。従業員数は厚生年金保険の被保険者数で数え、個人事業所は事業所ごとにカウントします。
人を雇う個人事業主が受ける影響
規模要件が下がるほど、小規模な事業所でもパートの加入義務が生じます。加入対象の従業員が増えれば、事業主が負担する社会保険料(労使折半分)や事務手続きも増えます。
- コスト増
新たに加入するパートの社会保険料の事業主負担が発生する - 事務負担
対象者の把握・資格取得届の提出・保険料計算などの手続きが増える - 支援措置
新たに加入する短時間労働者について、事業主の追加負担を国が支援する措置が用意されている
自分の事業所がいつの段階で対象になりそうかを早めに把握し、パートの就業実態やコストを試算しておくと、施行時に慌てずに済みます。
【2029年10月〜】個人事業所の社会保険適用が17業種以外へ拡大

もう一つ、雇う側の個人事業主に直接効いてくるのが、個人事業所そのものの適用範囲の拡大です。これは短時間労働者の話とは別の論点なので、分けて理解しておきましょう。
常時5人以上なら17業種以外も対象に
現在、個人事業所が社会保険の強制適用になるのは、常時5人以上の従業員を使用し、かつ法律で定める17業種(製造・建設・士業など)に当てはまる場合だけです。2029年10月からは、この17業種以外の業種も適用対象に加わる予定です。
- 新たに対象となるのは農業・林業・漁業・飲食サービス・宿泊業などの非適用業種
- 常時5人以上か未満かで判断する基準は現行から変わらない
- 2029年10月時点ですでに存在している事業所は、当分の間は対象外とする経過措置がある
一人の個人事業主は引き続き対象外
ここでも誤解しやすいのが、一人の個人事業主は対象にならない点です。この拡大はあくまで「常時5人以上の従業員を使用する個人事業所」の話で、一人で活動するフリーランス本人が国保から厚生年金に切り替わるものではありません。
飲食店やサービス業などで5人以上を雇い、これまで業種の関係で加入義務がなかった事業所は、経過措置の対象になるかを含めて、施行時期に向けて確認しておきましょう。
立場別|2026年以降の改正で個人事業主はどう備えるか

ここまでの時系列を、あなた自身の立場に置き換えて整理します。同じ「個人事業主」でも、どの立場で関わるかによって、やるべきことは変わります。
一人で活動している場合
従業員を雇わず一人で活動している個人事業主(フリーランス)本人は、自動的に何かが変わるわけではありません。国保・国民年金の仕組みはそのまま続きます。とはいえ、社会保険料の負担を軽くしたい・厚生年金に入りたいというニーズがあるなら、別の入り方を検討する余地はあります。
- 現状維持
国保・国民年金のまま。保険料や制度は別記事で確認する - 入り方を変える
社保に加入できるサービスや法人化など、厚生年金に入るルートを比較する
家族を扶養している・扶養に入っている場合
配偶者や家族の働き方が絡む場合は、2026年4月の扶養認定ルールと2026年10月の壁の撤廃が関わります。給与で働く家族がいる世帯は、契約上の年収と実際の収入の見込みを確認しておきましょう。事業収入があるフリーランス自身が扶養に入る判定は、従来どおり収入全体で見られます。
従業員を雇っている場合
パートを含めて人を雇っている個人事業主は、企業規模要件の撤廃(2027〜2035年)と個人事業所の業種拡大(2029年10月)の両方の影響を受ける立場です。自社がいつの段階で対象になるかを見極め、対象者の把握とコスト試算を前倒しで進めておくと安心です。
まとめ

2026年以降、個人事業主(フリーランス)に関わる社会保険は、2025年6月成立の年金制度改正法にもとづいて段階的に変わっていきます。2026年4月に扶養認定のルールが変わり、2026年10月に106万円の壁が撤廃予定、2027〜2035年に企業規模要件が段階的に撤廃予定、2029年10月に個人事業所の適用業種が拡大予定、という流れです。
- 本人は直接対象ではない
一人で活動する個人事業主の国保・国民年金は、この改正で自動的には変わらない - 立場で影響が違う
家族の扶養・従業員の雇用が絡む人は、該当する時点の改正を早めに確認する - 時系列で備える
2026年4月/10月・2027〜2035年・2029年10月の予定を押さえ、必要な準備を前倒しする
大切なのは、自分がどの立場で関わるかを見極めることです。ニュースの見出しに不安をあおられるのではなく、この記事の時系列を手元の地図にして、自分に関係する改正だけを確認していけば、2026年以降の変化にも落ち着いて対応できます。
社会保険の適用拡大は、これから10年かけて段階的に進む長い話です。だからこそ、2026年のいま全部を完璧に理解する必要はなく、自分が関わる時点の改正だけを押さえておけば十分です。制度の変化に振り回されず、自分に合った社会保険の入り方・備え方を、落ち着いて選んでいきましょう。
